
目次
毒の作用
生体への毒物、劇物における主な毒の作用として下記の5つに大きく分けられる。
①細胞の崩壊と壊疽
②代謝作用への障害
③酸素の供給阻害
④中枢神経、循環器系の障害
⑤神経伝達機能の阻害
①細胞の崩壊と壊疽
毒劇物の例:塩酸、硫酸、硝酸、水酸化ナトリウム、アンモニア水、水銀、銀など。
②代謝作用への障害
毒劇物の例:黄リン、鉛化合物、ヒ素化合物、アンチモン化合物など。
③酸素の供給阻害
毒劇物の例:シアン化合物、ニトロベンゼン、塩素酸塩類など。
④中枢神経、循環器系の障害
毒劇物の例:メタノール、クロロホルム、スルホナールなど。
⑤神経伝達機能の阻害
毒劇物の例:有機リン製剤(EPN等)、パラチオンなど。
【参考】EPN:エチルパラニトロフエニルチオノベンゼンホスホネイト、有機燐化合物。生体中のアセチルコリンエステラーゼを阻害し毒性を示す。
毒物と劇物の判定
毒物と劇物の判定基準は、動物、ヒト、その他における知見、当該物質の物性、化学製品としての特性等を勘案して行われる。また原則として、得られる限り多様な暴露経路の急性毒性情報を評価し、どれか一つの暴露経路でも毒物と判定される場合には毒物に、一つも毒物と判定される暴露経路がなく、どれか一つの暴露経路で劇物と判定される場合には劇物と判定する。
~急性毒性の知見例~
(a)経口
毒物:LD50が 50mg/kg 以下のもの
劇物:LD50が 50mg/kg を越え 300mg/kg 以下のもの
(b)経皮
毒物:LD50が 200mg/kg 以下のもの
劇物:LD50が 200mg/kg を越え 1,000mg/kg 以下のもの
(c)吸入
(ガス)
毒物:LC50が 500ppm(4hr)以下のもの
劇物:LC50が 500ppm(4hr)を越え 2,500ppm(4hr)以下のもの
(蒸気)
毒物:LC50が 2.0mg/L(4hr)以下のもの
劇物:LC50が 2.0mg/L(4hr)を越え 10mg/L(4hr)以下のもの
(ダスト、ミスト)
毒物:LC50が 0.5mg/L(4hr)以下のもの
劇物:LC50が 0.5mg/L(4hr)を越え 1.0mg/L(4hr)以下のもの
(d)その他
LD50:半数致死量といい、試験に使われた一定数の動物の50%を死亡させる薬物の量を、その動物の体重1kg当たりの薬物量(mg)により表す。
LC50:半数致死濃度といい、試験に使われた一定数の動物の50%を死亡させる空気中の薬物の濃度を示します。通常、農薬でmg/Lなどと表わす。(ガス状の物質ではppmで表わす)吸入(LC50、1hr)は、実験動物に1時間吸入させ、50%を死亡させる薬物の濃度を示す。
急性中毒:一度に多量に体内へ吸収された場合に起こる中毒のこと。
慢性中毒:長時間にわたり、少量ずつ体内に吸収された場合に起こる中毒のこと。
解毒剤
試験に出そうな下記のものは暗記しておきましょう。
【一般】
①吸着剤:活性炭、Fe2(SO4)3飽和溶液など
②酸化解毒剤:0.1%過マンガン酸カリウム溶液、ヨウ素の希薄溶液など
【特定毒劇物】
①ヒ素化合物、アンチモン化合物、水銀化合物 ⇨ BAL(ジメルカプロール)
②シュウ酸塩類 ⇨ カルシウム剤(注射)
③シアン化合物 ⇨ 亜硝酸ナトリウムとチオ硫酸ナトリウム(注射)
④ヨウ素 ⇨ でんぷん溶液
⑤有機リン化合物 ⇨ PAM(2-ピリジルアルドキシムメチオダイド)
⑥強酸 ⇨ 弱アルカリ
⑦強アルカリ ⇨ 弱酸
⑧金属毒 ⇨ 胃洗浄、吐剤や下剤の使用、卵白などのタンパク汁、牛乳を飲ませる。
⑨クロルピクリン ⇨ 強心剤、興奮剤

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